眼内レンズの種類と選び方

2025.06.27 ブログ・症例実績

保険診療として扱う眼内レンズ

  1. クラレオン(単焦点眼内レンズ・乱視矯正あり)
  2. テクニス アイハンス オプティブルー(単焦点眼内レンズ・乱視矯正あり)
  3. レンティスコンフォート(多焦点眼内レンズ・乱視矯正あり)

選定療養として扱う眼内レンズ

  1. クラレオン ビビティ(焦点深度拡張型眼内レンズ・乱視矯正あり)
  2. クラレオン パンオプティクス(3焦点眼内レンズ・乱視矯正あり)
  3. ファインビジョン HP(3焦点眼内レンズ・乱視矯正なし)
  4. ジェメトリック(3焦点眼内レンズ・乱視矯正あり)
  5. ジェメトリックプラス(3焦点眼内レンズ・乱視矯正あり)
  6. テクニス オデッセイ(連続焦点眼内レンズ・乱視矯正あり)
  7. テクニス ピュアシー(焦点深度拡張型眼内レンズ・乱視矯正あり)
  8. アクリバトリノバ(3焦点眼内レンズ・乱視矯正あり)

選定療養対象外の眼内レンズ

  1. ギャラクシー(スパイラル設計・乱視矯正あり)
  2. インテンシティ(5焦点眼内レンズ・乱視矯正あり)
  3. エボルブ(焦点深度拡張型眼内レンズ・乱視矯正あり)
  4. ミニウェルレディ(焦点深度拡張型眼内レンズ・乱視矯正あり)

保険診療で使用される眼内レンズ

クラレオン(Clareon®)
単焦点眼内レンズ・乱視矯正対応(保険診療対応)

アルコン社製の最新単焦点眼内レンズで、 保険適用のスタンダードなレンズです。 透明度が高く、グリスニング(レンズの混濁)を抑える新素材「クラレオン」を採用し、鮮明で自然な見え方が特長です。 後発白内障を起こしにくい設計で、 乱視矯正にも対応しています。【遠方(1m 以遠)/中間(50~70cm)/近方(30~40cm)】のうち、いずれかにピントを合わせて、それ以外の距離を見る際には眼鏡が必要になります。その代わり、鮮明でクリアな見え方が得られるのが大きな特長です。

テクニス アイハンス(TECNIS Eyhance®)
単焦点眼内レンズ・乱視矯正対応(保険診療対応)

J&J社製で2020年から保険適用となった新しい単焦点眼内レンズです。独自の非球面光学デザインにより“中間距離(50~70cm)が見やすい”設計が特長で、遠方に加え、パソコン作業や調理なども裸眼で行いやすく、自然で違和感の少ない見え方が得られます。多焦点眼内レンズほどの「完全な裸眼生活」は望めませんが、光のにじみが少なく、夜間の見え方も安定しています。眼鏡を併用して快適に過ごしたい方におすすめのレンズで、乱視矯正タイプにも対応しています。

レンティス コンフォート(LENTIS Comfort®)
多焦点眼内レンズ(乱視矯正対応・保険適用)

保険診療で使用できる唯一の多焦点眼内レンズです。
遠方に加え、パソコン作業や調理などの中間距離も自然に見えるよう設計されており、日常生活での眼鏡依存を軽減できます。
先ほどのテクニス アイハンスよりも加入度数(手元を見るための度数)が大きいため、さらに中間距離が見やすくなっています。
ただし、多焦点レンズの中では加入度数が比較的低めなため、読書やスマートフォン操作など近方を見る際には眼鏡が必要になることがあります。
また、光のにじみ(ハロー・グレア)や、ゴースト現象(像の二重・薄い残像)、青視症(白が青白く見える)を感じることがあります。(個人差がありますが、多くは時間とともに順応します。)白内障以外に大きな眼疾患がない方が適応となり、乱視矯正にも対応しています。

選定診療で使用される眼内レンズ

クラレオン ビビティ(Clareon® Vivity®)
焦点拡張型眼内レンズ(EDOFタイプ・選定療養対応・乱視矯正対応あり)

遠方から中間距離(約50cm)までを自然に見やすくする、アルコン社製の新しい焦点拡張型(EDOF)眼内レンズです。単焦点に近い自然な見え方で、ハロー・グレアもほとんど感じられません。読書やスマホなど近方作業には眼鏡が必要となることがありますが、多くの日常生活では快適に過ごせます。老眼鏡の使用が必要になる点を理解したうえで、多焦点眼内レンズ特有のハロー・グレアやコントラスト低下が気になる方、自然な見え方を重視する方には特に適しています。

クラレオン パンオプティクス(Clareon® PanOptix®)
三焦点眼内レンズ(多焦点・選定療養対応・乱視矯正タイプあり)

遠方・中間(60cm)・近方(40cm)の3つの距離にピントが合う三焦点眼内レンズです。他の多くの三焦点眼内レンズが中間距離を約80cmに設定しているのに対し、日本人の体格や生活環境に合わせて60cmに最適化されており、日常生活での使いやすさが特長です。この独自技術「ENLIGHTEN™テクノロジー」は製薬分野のノーベル賞とも称される「プリガリアン賞」を受賞した実績もあります。読書やスマホなど近方も眼鏡なしで見える可能性が高く、活動的なライフスタイルに適しています。ハロー・グレアを感じる場合がありますが、見え方への理解があれば快適に使用できます。

ファインビジョン(FineVision®)
選定療養で使用できる三焦点眼内レンズ

遠方・中間(約80cm)・近方(約40cm)の3つの距離にピントが合うレンズです。世界初の三焦点眼内レンズとして、世界中に広く普及した実績があります。読書やスマホなど近方の見え方に優れ、幅広い距離を眼鏡なしで見られる可能性があります。中間距離はやや遠めの設計のため、日常的な距離感に多少の慣れが必要なこともあります。ハロー・グレアを感じる場合がありますが、自然で明るい見え方が特長です。ただし乱視矯正タイプ(トーリック)は日本国内で未承認のため、乱視が軽度な方までが適応となります。

ビビネックスジェメトリック(Gemetric)
選定療養で使用できる三焦点眼内レンズ

遠方・中間(約80cm)・近方(約40cm)の3つの距離にピントが合う、日本のHOYA社から発売された国産の三焦点眼内レンズです。従来の多焦点眼内レンズは、手元の見え方を重視するあまり遠方視がやや犠牲になる傾向がありましたが、ジェメトリックは回折ゾーンを狭く設計することで、遠方の見え方を保ちながらバランスよく3つの距離をカバーできる構造となっています。その結果、明所・暗所を問わず安定した遠方視が得られ、ハロー・グレアといった不快な光の現象も抑えられる設計です。夜間運転や街灯下での視認性にも配慮されており、夜間視力や自然な見え方を重視する方に適しています。乱視矯正タイプにも対応しています。

ビビネックスジェメトリックプラス(Gemetric Plus)
三焦点眼内レンズ・乱視矯正対応(選定療養)

HOYA Vivinex™シリーズの最新3焦点眼内レンズです。
従来のGemetricよりも近見を強化しており、読書やスマートフォンの操作に適しています。
Gemetricで近くが見えづらい場合、もう片眼にGemetric Plusを入れることで見え方を補う「ペアリング」が可能です。
遠方の見え方はやや控えめですが、組み合わせることで遠・中・近をバランスよくカバーできます。
他社製の多焦点レンズとの併用にも対応しており、片眼のみの挿入にも適しています。
「もう少し手元を見やすくしたい」というご要望に応える新しい選択肢です。
ハロー・グレアを抑えた設計で、夜間の見え方にも配慮されています。

テクニス オデッセイ(TECNIS Odyssey™)
連続焦点眼内レンズ・乱視矯正対応/選定療養

遠方から近方(約40cmまで)のすべての距離を眼鏡なしでカバーできる、最新のハイブリッド型多焦点眼内レンズです。従来の「テクニス シナジー」の後継モデルとして開発され、焦点拡張型(EDOF)と多焦点の技術を融合することで、より自然で連続した見え方と、ハロー・グレアなどの異常光視症の軽減を実現しています。また、術後の屈折誤差(予測度数からのズレ)をある程度許容できる設計とされており、視機能の安定性にも優れていると考えられています。読書やスマートフォンなど近方視にも強く、夜間運転を含む幅広い生活シーンで快適な見え方が得られます。乱視矯正タイプ(トーリック)にも対応しています。

テクニスピュアシー(TECNIS PureSee)
焦点拡張型眼内レンズ(EDOFタイプ・選定療養対応・乱視矯正対応あり)

焦点深度拡張型(Extended Depth of Focus:EDOF) と呼ばれるタイプの多焦点眼内レンズとなり、遠距離、中距離、近距離の日常生活のあらゆる場面をより自然に、シームレスに見ることができます。
また、単焦点眼内レンズと同等の高コントラストと低照度性能を実現していると共に、ハローやグレア、スターバーストなどの夜間光視症を単焦点眼内レンズと同等まで抑えており、夜間によく車を運転している方に向いている多焦点眼内レンズです。
反面、近見視力はTECNIS Odysseyに比べ若干劣るという特徴があります。乱視矯正タイプ(トーリック)にも対応しています。

アクリバ トリノバ(Acri.LISA tri-nova)
3焦点+焦点深度拡張型多焦点レンズ

ドイツのCarl Zeiss社が開発した、三焦点多焦点眼内レンズです。遠方・中間・近方(約40cm)の3つの距離に焦点が合うよう設計されており、特に近方視力に優れているのが特長です。視力の質にこだわるZEISS社ならではの光学設計で、明るくシャープな見え方と、自然な色再現性が評価されています。夜間にはハロー・グレアを感じることがありますが、全体として眼鏡への依存を大きく減らせるレンズです。レンズの適応範囲が広く、強度の近視、遠視、乱視の方にも対応しています。

選定療養外で使用される眼内レンズ(自費診療)

ギャラクシー(Galaxy)
スパイラル設計・乱視矯正対応(自由診療)

イギリスのRayner社が開発した、新構造の多焦点眼内レンズです。従来の回折型や焦点深度拡張型とは異なり、独自のAIエンジンを用いて、世界で初めて“らせん状”のスパイラル設計が採用されています。この構造は、焦点を徐々に伸ばすように設計されており、遠方から近方(約40cm)までスムーズにカバーできます。ハロー・グレアなどの異常光視症は単焦点眼内レンズと同等レベルにまで抑えられ、光学的ロス(入ってきた光を無駄にしてしまう割合:これが大きいほど見え方のクオリティーが下がります)もありません。加えて、コントラストの高いクリアな視界が得られるのも大きな特長です。見え方の質と快適性を重視する方に適しており、読書やPC作業など、日常のあらゆる距離で快適な視機能を提供します。革新的な構造により今後注目される次世代のプレミアムレンズです。

インテンシティ
5焦点眼内レンズ・乱視矯正対応(自由診療)

近方、中近、中間、遠中、遠方の5つの距離に焦点を合わせることができる5焦点眼内レンズであることが最大の特徴です。 独自の新しい設計思想を使用した光学設計で、光エネルギーのロスが6.5%と他の眼内レンズに比べ少なく、近方~中間、中間~遠方にも焦点が合わすことが出来る為、スムーズで連続した見え方を実現しています。5焦点レンズの為、日常のあらゆる活動をカバーすることができ、ハロー・グレアも少ないことから夜間での運転を多くされる方にも向いています。回折型の中では現時点ではとてもよいと考えているレンズです。

エボルブ(Evolve)
焦点深度拡張型眼内レンズ・乱視矯正対応(自由診療)

イタリアのSoleko社が開発した焦点深度拡張型レンズです。ハロー・グレアがないということが最大の特徴で、遠方から約50cmまで良好な近見視力を獲得できます。更にこのレンズは度数や乱視軸を完全オーダーメイド可能な多焦点眼内レンズで、強度近視や乱視の強い方にも対応できます。国内で承認されている選定療養対象の眼内レンズには規格がなく対象外となった方によい選択肢となります。素材から全て自社製造されている徹底ぶりで、非常に完成度の高い眼内レンズです。

ミニウェル・レディー Mini Well Ready
焦点深度拡張型眼内レンズ・乱視矯正(自由診療)

イタリアのSIFI MedTech社が開発した、焦点深度拡張型(EDOF)の多焦点眼内レンズです。遠方から中間距離まで自然でクリアな見え方が得られ、コントラスト感度の低下やハロー・グレアといった異常光視症が全くないのが特長です。近方(約50cm以内)はやや弱めですが、手元を重視した「Mini Well PROXA」と組み合わせ、優位眼(効き目)にミニウェルレディー、非優位眼にPROXAを挿入することで、遠方から近方まで快適な視界を実現するFUSION VISION(焦点深度の広がりを左右で連携し融合させる方法)という選択も可能です。スポーツや夜間運転が多い方、アクティブで動体視力を重視する方に適しています。乱視矯正にも対応しています。

眼内レンズは目覚ましい進歩を遂げており、より良い見え方が期待できる付加価値の高いレンズが登場しています。当院では、患者様の満足を第一に考え、手術費用が一律である単焦点眼内レンズの場合でも、乱視矯正用レンズを積極的に使用し、少しでも性能の高いレンズを選定するよう努めています。